「なんでこの人とは、うまくいかないんだろう」 「何を話しても、噛み合わない気がする」
職場には必ず、距離が縮まらない人がいます。
相手が悪いわけじゃない。自分が悪いわけでもない。 でも、なんとなく、距離が遠い。
会議で意見がぶつかる。 報告の仕方が気に入らない。 なんとなく、イライラする。
その距離の正体は、もしかしたら「バイアスの違い」かもしれません。
職場の距離は、バイアスが作っている
上司が「もっとリスクを取れ」と言う。 あなたは「慎重にやらないと危険だ」と思う。
これは、価値観の違いでしょうか? それとも、経験の差でしょうか?
もしかしたら、バイアスの違いかもしれません。
上司は楽観バイアスが強く働いていて、「うまくいく可能性」を先に見る。 あなたは損失回避バイアスが強く働いていて、「失敗するリスク」を先に見る。
どちらが正しいわけでもない。 ただ、見ている景色が違うだけ。
同僚が「前のやり方の方が良かった」と言う。 あなたは「新しい方法を試すべきだ」と思う。
これは、柔軟性の違いでしょうか?
もしかしたら、バイアスの違いかもしれません。
同僚は現状維持バイアスが働いていて、「変えないこと」を選びたい。 あなたは確証バイアスが働いていて、「新しい方法が正しい」という思い込みに合う情報を集めている。
どちらが正しいわけでもない。 ただ、判断の基準が違うだけ。
職場で使われている「バイアス10選」
職場では、様々なバイアスが無意識に働いています。 そして、それが人との距離を作っています。
1. 確証バイアス 👉 「やっぱりこの人はこうだ」と、自分の印象に合う行動だけを見て、相手を決めつける。
2. ステレオタイプバイアス 👉 「若手は/ベテランは」「営業は/技術は」と、カテゴリーで相手を判断してしまう。
3. 後知恵バイアス 👉 「だから言ったじゃないか」と、結果を知った後に「最初から分かっていた」と相手を責める。
4. アンカリングバイアス 👉 最初に聞いた意見が基準になり、その後の提案が「それと比べてどうか」で判断される。
5. 損失回避バイアス 👉 失敗を恐れすぎて、新しい提案に反対してしまう。「リスクを取るな」と言ってしまう。
6. 楽観バイアス 👉 「なんとかなる」と軽く見て、相手の不安を無視してしまう。「考えすぎだ」と言ってしまう。
7. 現状維持バイアス 👉 「今のままでいい」と、相手の変化への提案を拒んでしまう。「前からこうだから」と言ってしまう。
8. 利用可能性バイアス 👉 直近のミスが強く印象に残り、「この人はいつもこうだ」と決めつけてしまう。
9. 集団同調バイアス 👉 「みんなそう言ってる」と、周りの意見に合わせて、相手を孤立させてしまう。
10. 正常性バイアス 👉 「まだ大丈夫」と、相手の懸念を軽く見て、問題を放置してしまう。
これらは、あなたも、あなたの上司も、あなたの同僚も、今日使ったバイアスかもしれません。
バイアスに気づくと、「相手が悪い」が「景色が違う」に変わる
会議で意見がぶつかったとき。
「この人は頭が固い」と思った。
でも、それは確証バイアスかもしれません。 あなたは「この人は頭が固い」という印象に合う発言だけを記憶している。 柔軟な発言は、聞こえていなかったかもしれない。
上司から「考えすぎだ」と言われたとき。
「この人は私の不安を分かってくれない」と思った。
でも、それはバイアスの違いかもしれません。 上司は楽観バイアスが強く、リスクが小さく見える。 あなたは損失回避バイアスが強く、リスクが大きく見える。
どちらが正しいわけでもない。 ただ、見ている景色が違うだけ。
同僚が「前のやり方の方が良かった」と繰り返すとき。
「この人は変化を拒んでいる」と思った。
でも、それは現状維持バイアスが働いているだけかもしれません。 相手は変化を恐れているのではなく、変化のリスクが大きく見えているだけ。
バイアスに気づくと、「相手が悪い」という感情が、「相手は違う景色を見ている」という理解に変わります。
バイアスの違いを、言葉にしてみる
職場の距離を縮めるために、バイアスを消す必要はありません。
ただ、違いを言葉にしてみることです。
会議で意見がぶつかったとき。
「私は損失回避バイアスが強いから、リスクが大きく見えるんです」 「あなたは楽観バイアスが強いから、可能性が大きく見えるんですよね」
そう言葉にできたら、どうでしょう?
「あなたが間違ってる」ではなく、「私たちは違う景色を見てるんだ」と分かります。
上司に「考えすぎだ」と言われたとき。
「私はリスクを大きく感じるタイプなので、慎重になってしまうんです」 「でも、あなたの視点も分かります。可能性にフォーカスすることも大切ですよね」
そう伝えられたら、上司の表情も変わるかもしれません。
同僚が「前のやり方の方が良かった」と言ったとき。
「あなたは現状維持バイアスが働いてるのかもしれないですね」 「変化のリスクが見えてるんですよね。それも大切な視点だと思います」
そう受け止められたら、同僚も話しやすくなるかもしれません。
職場の距離は、バイアスの違いを認めることで縮まる
職場の距離が縮まらないのは、相手が悪いからでも、あなたが悪いからでもありません。
ただ、お互いのバイアスが違うことに、気づいていなかっただけかもしれません。
バイアスの違いを認めることは、相手を変えることをやめることです。 そして、相手の景色を理解しようとすることです。
それが、職場の距離を縮める第一歩です。
職場の「あの人」との距離は、バイアスの違いを認めることで、少しずつ縮まります。