私たちは毎日、無数の判断をしています。朝起きてから夜眠るまで、何を食べるか、誰と話すか、どう反応するか。そのすべてが「判断」の連続です。
でも、その判断の多くは、実は「バイアス」によって歪められています。バイアスとは、私たちの思考を無意識に特定の方向へ傾ける「認知の癖」のこと。そして、それは誰にでもあります。
「私は冷静に判断している」と思っているその瞬間にも、バイアスは静かに働いています。
今日、あなたが使ったバイアス
朝、SNSを開いたとき。 「またこの意見か」と思って、スクロールを飛ばしませんでしたか?
それは確証バイアスです。自分の考えに合う情報だけを選び、合わない情報は無意識に避けてしまう。
昼、同僚の提案を聞いたとき。 「この人はいつもこうだから」と、話を聞く前から結論を出していませんでしたか?
それはステレオタイプバイアスです。過去の印象やカテゴリーで相手を決めつけてしまう。
夜、家族と話していて。 「前にも同じこと言ったよね」と、相手の言葉を遮りませんでしたか?
それは利用可能性バイアスです。直近の記憶が鮮明なほど、「いつもそうだ」と感じてしまう。
これらはすべて、今日一日のうちに、あなたの中で静かに働いていたバイアスです。
バイアスは「悪」ではない
ここで大切なのは、バイアスを「悪いもの」として否定することではありません。
バイアスは、私たちが生き延びるために脳が獲得した「効率化の仕組み」です。すべての情報を完璧に処理していたら、脳はパンクしてしまいます。だから、脳は「近道」を使う。それがバイアスです。
問題は、その近道が「今の状況に合っていない」ときです。
たとえば、職場で新しい提案を聞いたとき。 「前に似たようなことをやって失敗したから、これもダメだろう」と思ったとします。
それはアンカリングバイアスかもしれません。最初に触れた情報(前回の失敗)が基準となり、その後の判断がそこに引きずられてしまう。
でも、今回の提案は前回とは違うかもしれない。状況も、メンバーも、タイミングも。なのに、「前回の失敗」というアンカーが、新しい可能性を見えなくさせている。
あなたも今日使っているバイアス10選
ここで、私たちが日常的に使っているバイアスを10個挙げてみます。
1. 確証バイアス 👉 自分の信念に合う情報だけを集め、反対の情報は無視する。
2. 正常性バイアス 👉 「自分は大丈夫」と思い込み、危険のサインを過小評価する。
3. 後知恵バイアス 👉 結果を知った後に「最初から分かっていた」と思い込む。
4. 現状維持バイアス 👉 変化を避け、今のままでいることを無意識に選ぶ。
5. 利用可能性バイアス 👉 思い出しやすい情報ほど、頻繁に起こると錯覚する。
6. アンカリングバイアス 👉 最初に触れた情報が基準となり、その後の判断が引きずられる。
7. ステレオタイプバイアス 👉 カテゴリーやラベルで人を決めつけてしまう。
8. 損失回避バイアス 👉 得をする喜びよりも、損をする痛みを強く感じてしまう。
9. 楽観バイアス 👉 自分には悪いことは起こらないと思い込む。
10. 集団同調バイアス 👉 周りの意見に無意識に合わせてしまう。
これらは、あなたが今日、無意識に使ったバイアスかもしれません。
バイアスに気づくと、何が変わるのか
バイアスの存在を知ることで、何が変わるのでしょうか。
それは、「自分の判断を疑う余白」が生まれることです。
たとえば、誰かの意見に強く反発したとき。 「これは確証バイアスかもしれない」と思えたら、一度立ち止まることができます。
家族との会話で「またか」と感じたとき。 「これは利用可能性バイアスかもしれない」と思えたら、相手の言葉をもう一度聞き直すことができます。
新しいことを始めるのが怖いとき。 「これは現状維持バイアスかもしれない」と思えたら、一歩踏み出す勇気が湧くかもしれません。
バイアスに気づくことは、自分の判断を「絶対」から「相対」に変えることです。
「私の判断は正しい」ではなく、「私の判断は、今このバイアスの影響を受けているかもしれない」と思えること。
それが、揺れを受け入れる第一歩です。
バイアスと共に生きる
バイアスは、消すことができません。 そして、消す必要もありません。
大切なのは、「バイアスがあること」を知ること。 そして、「今、自分はどのバイアスの影響を受けているか」に気づくこと。
それだけで、判断の質は変わります。
あなたが今日使ったバイアスは、あなたを守るために働いていました。 でも、それが今のあなたに合っているかどうかは、別の話です。
バイアスに気づくことは、自分の内側を知る入口です。
バイアスは、あなたの敵ではなく、あなたの一部です。