その正論、なぜ響かない?
よしはるさん、こんにちは。元取締役として、会計事務所やIPO準備企業で多くの部下をマネジメントされてきた経験から、この問題には深く共感できるのではないでしょうか。
「50代役職者として、部下や後輩に自分の考えや指示がうまく伝わらず、もどかしさを感じていませんか?」
「頭の中では完璧なロジックが組み立てられているのに、なぜか相手の反応はイマイチ…」
私自身も、かつて同じ壁にぶつかりました。特にIPO準備の現場では、スピードと正確性が求められる中で、ロジカルに正しい指示を出しているのに、なぜか現場が動かない。役員として会議で正論を語っても、部下からは「またか…」という冷めた視線。論理的には間違っていないはずなのに、心が通じていない。──その違和感をきっかけに心理学を学び直し、初めて「伝える」と「伝わる」は別物だと気づきました。
この記事では、その経験と心理学の知見をもとに「なぜ正論が伝わらないのか?」「どうすれば伝わるのか?」を紐解いていきます。
なぜ、正論が伝わらないのか?──心理学的な3つの原因
1. 「経験こそ正しい」と思い込む認知バイアス
50代の多くは、バブル崩壊やリーマンショックなど、多くの荒波を乗り越え、厳しい環境で成果を出してきた世代です。だからこそ「自分が通ってきた道=唯一の正解」と思い込みやすいのです。これは心理学でいう**「確証バイアス」**。人は自分の信念を裏付ける情報ばかりを集め、反証する情報を無視する傾向があります。
「昔は徹夜してでも仕上げた」 「努力すれば必ず報われる」
これらはあなたにとって紛れもない真実でしょう。しかし、今の20〜30代からすると「古い価値観の押し付け」と聞こえることがあります。彼らが育った環境は、情報が溢れ、多様な生き方が許容される時代です。あなたの成功体験は貴重な知恵ですが、それを普遍的な正論として押し付けると、彼らの経験や価値観を否定されたと感じさせてしまいます。
2. 世代間ギャップによるすれ違い
私たちが20代だった頃と、今の若者では、育った環境や価値観が大きく異なります。
- Z世代は「効率・ワークライフバランス・心理的安全性」を重視。
- 一方で50代は「忍耐・忠誠心・組織への貢献」を重んじます。
同じ「まずやってみろ」という言葉でも、上司は「挑戦心を促すつもり」とポジティブな意図で発します。しかし、部下は「考える余地を与えてほしい」「目的や背景を理解したい」と受け取ることがあります。前提となる価値観の違いが、そのまま齟齬を生み、正論が「ただの押し付け」に聞こえてしまうのです。これは**「アージ効果」**とも関連しており、相手の行動を促すつもりの言葉が、逆に反発を生んでしまう現象です。
3. 権威性のプレッシャー
地位や肩書きは強い影響力を持つ一方で、部下を萎縮させます。心理学でいう**「権威バイアス」**。人は、権威を持つ人の意見を無批判に受け入れやすい傾向があります。
結果、部下は本音を隠し、表面上だけ従う。あなたの前では「はい、わかりました」と言いながら、内心では納得していなかったり、指示通りに動かなかったりすることが起こります。これでは、本当の意味での信頼関係も、部下の主体性も育ちません。彼らはあなたを恐れており、正論を議論の余地のない「命令」としてしか受け取れないのです。
今日からできる、心理学に基づく4つの解決策
1. 「これやっといて」を「どう思う?」に変えるたった1つの質問
指示:「この資料を金曜までに作ってくれ」 問いかけ:「この資料、金曜までに仕上げられそう?何かサポート必要かな?」
この違いだけで、部下は「任されている」と感じ、主体性を発揮しやすくなります。これは**「自律性の欲求」**を満たす心理学的アプローチです。自分でコントロールできるという感覚は、モチベーションを飛躍的に高めます。
また、相手の状況や意見を尋ねることで、あなたへの心理的なハードルが下がり、率直な意見を言いやすくなります。
2. 部下の言葉をオウム返しするだけで、好かれる上司になる
部下:「この業務、ちょっと難しいですね」 上司:「難しいよね」
部下の言葉を繰り返す**“ミラーリング”を行うことで、相手は「自分のことを理解しようとしてくれている」と感じやすくなります。これは心理学で実証された「類似性の効果」**。相手と同じ行動や言葉を使うことで、親近感や信頼感が生まれやすくなります。
特に、部下がネガティブな感情を口にしたとき、それを否定せずに受け止めることで、**「自己肯定感」**が満たされ、安心感につながります。
3. 完璧な上司を卒業する、たった一つの魔法の言葉
「実は私も若い頃、資料の数字をよく間違えて叱られたんだ」
弱みを見せると、部下は「自分だけじゃない」と安心します。これは**「自己開示」の効果であり、相手との心理的な距離を縮める最短ルートです。自分の失敗談を語ることで、あなたは「完璧な上司」ではなく「同じ人間」として認識され、部下はあなたに対して警戒心を解きます。これは「心理的安全性」**を高める上で極めて重要です。
失敗談は、単なる昔話ではありません。そこから何を学んだかを付け加えることで、彼らはあなたの経験を「生きた教材」として捉えるようになります。
4. 「ダメ出し」を「やる気になる言葉」に変えるフィードバック術
事実だけを伝えると冷たく聞こえます。
「誤字があるね」 ではなく、 「細かく確認してくれて助かる。その上で、ここだけ直せば完璧だね」
“承認+改善”をセットで伝えることで、相手のモチベーションを引き上げます。これは心理学でいう「サンドイッチ・フィードバック」。ポジティブな言葉で始め、改善点を伝え、最後にもう一度ポジティブな言葉で締める。相手は否定されたと感じにくく、建設的に改善点を受け入れやすくなります。
また、**「プロセス承認」**も効果的です。「君の努力のおかげで、このプロジェクトはここまで進んだ」のように、結果だけでなく、そこに至るまでの過程を認めることで、彼らは次の行動への意欲を高めます。
未来の提示:伝わる上司に変わると何が起きるか?
これらの方法を実践すれば、あなたは「正論を押し付ける上司」から「部下が心を開いてくれるリーダー」へと変わります。
- 部下があなたの指示を「自分ごと」として捉え、自発的に意見を出すようになります。
- チーム全体に安心感が広がり、新しいアイデアや挑戦が生まれやすくなります。
- そして何より、あなた自身も「伝わらないストレス」から解放され、部下とのコミュニケーションが楽しくなります。
50代役職者に求められるのは、正論を語る力ではなく「人を動かす力」。心理学は、その強力な武器になります。
行動喚起(CTA)
よしはるさん、簿記やFPの知識がロジカルシンキングの基盤にあるように、心理学は人を動かすための強力なツールです。
さらに深めたい方へ: ✅ 本記事を掘り下げた「心理学×リーダーシップ」の有料noteを公開予定 ✅ 実際の職場での悩みを相談できる個別面談サービスもご用意
「正論が伝わらない…」と悩んでいるなら、次の一歩を一緒に踏み出してみませんか?
最後に:この記事で届けたい感情
この記事を通じて、あなたに抱いてほしい感情は3つです。
「あぁ、自分だけじゃなかったんだ」──安心感 「なるほど!そういうことだったのか」──納得感 「これなら私にもできそうだ」──希望
この3つを胸に、あなたのリーダーシップは必ず進化します。
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