【成長と定着を実現】心理的安全性を超える「ポジティブ・ディスコンフォート」の作り方_アイキャッチ(WPサイト)

【成長と定着を実現】心理的安全性を超える「ポジティブ・ディスコンフォート」の作り方

働き方改革が叫ばれ、ウェルビーイング(幸福)が経営指標に組み込まれる今、多くの企業で「心理的安全性」の確保が急務とされています。発言や挑戦がしやすい、安心できる環境は、離職率の低下やイノベーションの土壌を耕す上で不可欠です。

しかし、私がCFOとして組織の成長を間近で見てきた経験から断言できます。安心は、時として**「停滞」という名の罠**になり得ます。

安全すぎる職場では、「挑戦しないこと」が最も安全な選択肢になります。誰も痛みを負いたがらないため、現状維持バイアスが蔓延し、気がつけば組織全体がぬるま湯に浸かってしまう。心理的安全性は、あくまで「成長のための土台」であり、それ自体が目的ではありません。この「安心による停滞」こそ、現代のリーダーシップが直面する最大の課題です。

心理的安全性は万能ではない:「安心」が「停滞」を生む構造

心理的安全性の基本的な定義は「対人関係のリスクを恐れず、自分の意見や懸念を率直に表明できる状態」です。これ自体は極めて重要で、特にスタートアップや新規事業立ち上げ時には、失敗を恐れないチャレンジ精神を支えます。

では、なぜこれが停滞を招くのか。

組織が成熟すると、「失敗=損害」という意識が強まります。心理的安全性が確保されていても、誰もが心地よいゾーン(コンフォートゾーン)に留まりたがります。「挑戦不足」の結果、イノベーションは生まれず、やがて来る市場の変化に対応できなくなる。経営層は組織を前に進めたい。しかし、現場は「安心」という名の現状維持を望む。この構造こそが、組織の成長を阻む大きな要因です。

成果と幸福の成長刺激装置:「ポジティブ・ディスコンフォート」の正体

私たちはここで、「ポジティブ・ディスコンフォート」という、成長を促すための前向きな不快感を意図的に導入する必要があります。

これは決して、過度なストレスや恐怖による「ネガティブな不快感」(萎縮や離職に直結するパワハラ)とは異なります。ポジティブ・ディスコンフォートとは、「信頼されているからこそ、能力の一歩外側に挑戦させられる」という、成長痛のようなものです。

この前向きな不快感は、困難な課題を通じて「自分はできる」という自己効力感を高め、結果的に**「楽=幸福」ではなく「成長実感=幸福」という、より持続的な幸福観を部下に植え付けます。これは、成果と幸福を両立させるための、強力な成長刺激装置**なのです。

挑戦の土壌を耕す!ポジティブ・ディスコンフォートを生む3つの鍵

この「ポジティブ・ディスコンフォート」を生み出すには、単に厳しい課題を課すだけでは不十分です。以下の3つの要素が欠かせません。

4-1. 長期的視点:目先のComfort Zoneから未来のGrowth Zoneへ

短期的な業務の効率化ではなく、数年後のキャリアから逆算して、今の挑戦を位置づけることです。これは、私がFP(ファイナンシャルプランナー)として行う、人生の長期目標から逆算した計画に似ています。

「この失敗や困難は、あなたの10年後の市場価値を上げるための投資だ」と明確に伝え、挑戦を個人のキャリアマップに紐づけることで、部下は目先の不快感に耐える動機付けを得られます。

4-2. 共感的リーダーシップ:「あなたを信頼しているからこそ」の挑戦

部下に不快感を課すとき、リーダーが単なる「厳しさ」になってはいけません。上級心理カウンセラーの視点から言えば、最も重要なのは共感です。

「この課題は難しいことは理解している。不安だろう。だが、あなたにはこれを乗り越える力があることを、私は知っている」と伝えることです。感情を理解し、その上で信頼を表明する。この「共感に裏打ちされた挑戦」こそが、ポジティブ・ディスコンフォートの核であり、単なるパワハラとの明確な境界線です。

4-3. クリエイティブシンキングの場:「正解探し」から「可能性の模索」への移行

私がIPO準備の責任者を務めていた際、そこには常に「正解のない不確実性」がありました。ポジティブ・ディスコンフォートを育むには、あえて**“正解が一つではない”プロジェクト**を任せることが有効です。

正解探しではなく、「ゼロベース思考」で最適な解を導く機会を与える。不確実性の中で試行錯誤する経験こそが、部下のクリティカルシンキング自律性を飛躍的に向上させます。

実践ロードマップ:安全な土台から「前向きな不快感」を定着させる4ステップ

このアプローチを実践するには、まず安全な土台が必要です。

  1. ステップ1:安全な土台づくり:まずは信頼と透明性を確保し、最低限の心理的安全性を築きます。
  2. ステップ2:小さな挑戦課題を設定:部下の能力の110%程度の、**達成可能な「前向きな不快感」**を伴う課題を設定し、成功体験を積ませます。
  3. ステップ3:フィードバックを「成長の鏡」として機能させる:失敗を責めるのではなく、その挑戦から何を学べたかを客観的に解釈し、次の挑戦へ活かす**「成長の鏡」**として機能させます。
  4. ステップ4:挑戦とリカバリーを繰り返し、習慣化する:失敗してもリカバリーできる環境と、「次こそは」という前向きな姿勢を育み、挑戦を組織の文化として定着させます。

導入時の落とし穴:「ポジティブ」が「パワハラ」にならないための境界線

この強力な成長施策には、大きなリスクが伴います。共感を欠いた挑戦は、瞬時に**「単なるパワハラ」**に転化します。

最大の注意点は**「個人差の見極め」です。全員に同じ強度の課題を課すのは逆効果です。例えば、内向的で熟考を好むINFP(MBTI)**のようなタイプには、公の場での即興的な発言よりも、深く掘り下げる調査課題の方がポジティブな不快感になります。

リーダーは自身のバイアスを認識し、部下一人ひとりの特性や感情状態を定期的な対話で確認しながら、挑戦の強度と種類を調整し続ける必要があります。

まとめ:CFO経験者が語る、成果を追求する組織に必要な「痛み」

心理的安全性は重要ですが、組織の成長、そして個人の真の幸福は、その先の「ポジティブ・ディスコンフォート」の領域でこそ実現します。

私自身のCFO経験からも、IPOという極度の不確実性と重圧の中で、チームが最高の成果を出したのは、高い信頼のもとに前向きな挑戦を強いられた時でした。楽をして得られる幸福は一瞬で消えますが、痛みを伴って達成した成長実感は、揺るぎない自信と幸福をもたらします。長期的視点、共感、そしてクリエイティブシンキングが、その鍵となります。


読者のあなたも、部下に優しくありたい、でも成長もさせたいというジレンマに悩んでいるのではないでしょうか。

よろしければ、あなたのチームで今、最も挑戦を避けがちな課題は何だと思いますか?具体的な事例を一つだけ教えてください。

あなたのコメントは、必ずFPとして私がすべて読み、全力で返信します。一緒に、挑戦の土壌を耕していきましょう。

[コメントはSNS(https://x.com/kokoronoyohakuj https://www.threads.com/@kokoronoyohaku)で受け付けています]
【成長と定着を実現】心理的安全性を超える「ポジティブ・ディスコンフォート」の作り方_アイキャッチ(WPサイト)
最新情報をチェックしよう!